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文化と歴史をたどる 郷土文化ものがたりPart2

文化と歴史をたどる 郷土文化ものがたり Part2

今回は、イトッパについてのお話です。聞きなれない言葉ですが、イトッパはアイヌの人たちの家標(いわゆる家紋のようなもの)の事です。チロットコタンに伝わるイトッパについて、ほんのさわりの部分ですがご覧ください。

「チロットのイトッパ」 ~家標~

郷土文化研究員  小助川 勝義

アイヌの人々
 

アイヌ文化の伝承者安東ウメ子さんは生前に安東家に伝わる民具を「幕別町ふるさと館」に寄贈してくれました。その内容はタマサイ(女性の首飾り)、イナウル(男性の冠)、マレック(回転銛)、パスイ(酒捧箆)、サラニップ(手提げ袋)、ムックリ(口琴)、イタンキ(椀)、トゥキ(朱塗り椀)、パッチ(鉢)、シントコ(行器=ほかい)等、全部で68点でした。これらの民具は平成19年5月の連休にオープンしたふるさと館の新しい常設展示『アイヌの人々』コーナーのショーケースに展示されています。

チロットコタン

 安東家はチロットコタンに長く続く由緒ある家系のひとつです。チロットコタンは現在の蝦夷文化考古館のある千住地区一帯に広がる大きくて豊かなコタンでした。戸数は1855(安政2)年の調査では7戸で、1872(明治4)年の調査では6戸でした。「幕別百年史」によると、チロットコタンの家系は『いずれも他管内から移住してきた男性が、幕別に住んでいた女性と一家を構える』ということから始まった母系統の家系が始まりとしています。
その系統は
   A-ハウスアンル系(屈足の人)
   B-シアリセルシ系(アバシリの人)
   C-ホクベアマ系(音更の奥の人)
   D-ハウパッパレ系(釧路の人)
   E-コイリマツ系(ウシシュベツより5里川上の人)
という5つの系統です。

安東家と吉田家
 

その家系図から見ると安東家は軍次郎氏からさかのぼると二つの家系にまたがっていることが分かります。一つはAのハウスアンル系で軍次郎→利軍(リクンノウク)→トッコウク・妻シタトリ→イコテンコロ・フップ→ハウスアンル(屈足の人)・妻イナウシカウク、となっています。もう一つはDのハウパッパレ系の軍次郎→利軍→トッコウク・シタトリ→イコテムコロ・フップ→ハウパッパレ(釧路の人)・ハルヌカ(白人に住む)となっています。一方、指導者吉田菊太郎の吉田家はCのホクベアマ系で菊太郎→庄吉(トイベウク)・妻アシマツ→イノミウシ・妻フットラ→ホクベアマ(男)となっています。

イトッパがあった
 

今回、吉田資料(蝦夷文化考古館の文書資料)『白人土人家標(イトッパ)調』の解読作業を進めていくうちに、チロットコタンの昭和初期までの家系とイトッパがわかってきました。これを記録した人はその筆跡から見て当時白人コタンや十勝アイヌの共有財産の管理を委託された大津出身の内海勇太郎か又は吉田菊太郎かと思われます。幕別町百年史によると勇太郎が亡くなった後、勇太郎が古老から聞いて記録した手帳を妻の内海ハマが吉田菊太郎に譲ったものと記してあります。これを調べていくと、当時のチロットコタンの家系と同時にそれぞれの家系のイトッパ(家標)が記録してありました。

イトッパとは何か

 アイヌの人々はイトッパ(家標)という家系を表す「しるし」を伝えていました。家標と似た言葉に家紋というものがありますが、家紋とは戦国時代の頃から戦や他の武士団と交流する場面で使うもので、それぞれの武士がどこの家系であるか一目で区分できるよう考え出された印です。それは戦の旗印のほか衣装にも『紋付袴』などと使われるようになりました。現代でも和服等に描かれる「巴(ともえ)紋」とか「木瓜(もっこう)紋」などの家紋を見ることがあります。ところが、アイヌの人々の家系を表すイトッパ(家標)とは主としてイクパスイ(酒捧箆)の表面や裏面にマキリ(小刀)で彫りこんだ標(しるし)として見ることができます。そのしるしは、直線を組み合わせたシンプルな形が多く見られます。二本線または三本線を上下に記し縦の直線で繋ぐもの、中央に「×」や曲線を配置した線を彫り込んだものなどがあります。このようにイクパスイの裏にイトッパが遺されていることがあるということが言われていましたが、今回の吉田資料によりチロットコタンのイトッパを知ることができました。

本物がふるさと館に
 

この度の吉田資料の調査の過程で、新しい常設展示「アイヌの人々」にある民具を改めて調べたところイクパスイ6点全部にイトッパと思われるしるしと、イタンキ(椀)2点にイトッパではないかと思われる彫られた線のあることが分かりました。そしてその中に安東家の家系であるハウパッパレ系のイトッパと同じしるしのあるパスイが1点見つかりました。
吉田資料に記録として残されていたイトッパのしるしと、展示してある安東家のイクパスイの中のしるしが一致したのです。

アイヌ文様
 

このようにイトッパは文様ではなくて、あくまでもしるしです。アイヌの人たちは、アイヌ文様と呼ばれる美しい文様を代々受け継いできました。アイヌ文様も大きな意味では、その家系をあらわすものと考えることができますが、むしろ一族や地域の人々の心やメッセージを長い時間をかけて受け継がれてきたもので文化そのものといえます。カムイノミ(儀式)、イチャルパ(先祖供養)、イオマンテ(熊送り)などや大切に迎える来客があるとき晴れ着を身に着けます。これらの晴れ着には刺繍や布の貼り付けで鮮やかな文様が施されています。この文様は祖母から母へ、母から娘へ受け継がれてきたものです。一方では男性の彫刻がなされているマキリのケースやイタ(盆)の文様も先祖から代々男性の間で伝えられたものです。蝦夷文化考古館やふるさと館には、わずかではありますが、これらの文様が施された貴重な本物の民具があるのです。

チロットのイトッパ

1.チャルボ
 (キヨカワ)

2.ホクベアマ
 (キクタロウ)

3.コイリアツ
 (ツルヌマ)

4.シアリセルシ
 (フジタロウ)

5.カウカフシ
 (リクン)

6.アリヤウカ

7.タプケアイノ
 (ササキ)

8.キクタロウ

9.イタクメトク

801 イクパスイ(表)

801 イクパスイ(裏)

830 イクパスイ(表)

831 イクパスイ(表)

832 イクパスイ(裏)

833 イクパスイ(表)

833 イクパスイ(裏)

834 オクパスイ(表)

847 イタンキ(底)

848 イタンキ(底)

835 オッチケ(底)

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