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忠類ナウマン象化石の再発見および【緊急報告会の開催】について

 令和6年10月に忠類ナウマン象発見の地で行った調査で、忠類ナウマン象の化石を1点発見しました(頭骨の一部:別紙1)。忠類ナウマン象化石の発見は54年ぶりです。化石が頭骨であったことは、今後の研究や生涯学習事業を進める上で、重要な意義を持つこととなりました。12月22日(日)には忠類ナウマン象記念館で緊急報告会を開催し、この時に化石もお披露目します。

基本情報

発掘期間:令和6年10月21日(月)〜25日(金)

調査地:忠類ナウマン象発見の地(幕別町忠類晩成)

発見日時:令和6年10月25日(金)午前8時頃

化石の大きさ:約7cm

年代:約12万年前

発見者:幕別町教育委員会 学芸員 添田雄二

鑑定者:足寄動物化石博物館 学芸員(前館長)澤村 寛氏

背景

 忠類ナウマン象化石は1969年に道路工事中に偶然発見され、同年と1970年に1頭分の骨が発掘されました。当時の研究では、沼に足を取られてその場で死んだと考えられ、しばらくそれが定説となっていました。しかし、2007〜2008年に行われた地質調査の結果、忠類ナウマン象は死後に化石産出地点の近く(北側)から洪水の影響で流されてきて土砂と共に埋まった可能性が学会誌で発表され(例えば、里口,2010、添田,2010、高橋,2010)、さらに、多数の足跡化石が存在することも報告されました(岡村,2010)。これらの研究成果は、約12万年前、この地は動物たちが普通に歩くことができた河川沿いの低地であった(沼ではなかった)ことを示しておりました。2019年から町教委主催で行ってきた発掘調査でも、沼は無かったことが確認されていました。

 一方、忠類ナウマン象化石は、背骨(椎骨)と肋骨が数点しか発掘されておらず、これについては、1970年当時の報告書で「化石は水分の多い地層中にあったため軟らかく肋骨や椎骨、指骨の多くは泥塊状となり発掘が不可能であった」とされていました。例えば、現生ゾウ類では肋骨は左右で計38〜40本あります。しかし1969〜1970年当時の発掘図面では肋骨は15本程度しかなく(掘り上げることができたのは3本プラス破片)、同じく現生ゾウ類では首から腰まで30個以上ある椎骨は7個しか発掘されていませんでした。肋骨や椎骨の多くが泥塊状となっていたことを踏まえても、あまりに数が少ないことは謎でした。町教委は、この背景には忠類ナウマン象が洪水で流されてきたことに関係している、すなわち、腕や足、腰の骨など大型の骨より軽い骨(肋骨や椎骨、その他の骨の破片など)は、洪水の流路上においてやや広範囲に分散した(1969年と1970年に未発掘であった地層中に残されている)と推定しました。

 以上のことから、洪水流路にあたると推定される場所を令和5(2023)年の発掘調査で試掘したところ、忠類ナウマン象が埋まっていた層と同じ地層がまだ未発掘で残されていることを確認しました。今年度はそこを中心に発掘を行なった結果、頭骨片の発見に至りました。

頭骨発見の意義

研究的意義

 1969〜1970年の発掘では、多数の小さな骨片(その多くが数cm程度)も収集されていました。このうち1969年の道路工事の盛り土の中から採集された骨片のいくつかは「頭骨の一部」と推定されたことから、1970年代の報告書では「頭部は道路工事の際に破壊されてしまったものと思われ、断片が残存していたにすぎない」とされていました(例えば、地学団体研究会,1978)。このため、1972年に完成した忠類ナウマン象全身復元骨格の頭部は、実は頭蓋骨を千葉県産のナウマンゾウ、下顎骨は静岡県産のナウマンゾウをそれぞれモデルとして作製されました。しかし今回の発見によって、忠類ナウマン象の頭骨は死後に太陽光や風雨の影響である程度脆くなっていたこと、その後の洪水によって土砂と共に移動、埋没する過程で大小様々な大きさで砕けた可能性が高い(地層中には他にもまだ忠類ナウマン象の頭骨片が残されている)ことが判明しました。したがって、今後の調査で頭骨片の発見が続けば、さらに、ある程度の大きさの頭骨片が見つかれば、それらを基に忠類ナウマン象のオリジナルの頭骨を復元できる可能性が出てきました。

 なお、盛り土の中から発見された骨片は、忠類ナウマン象記念館に保管されています。工事現場の盛り土にはいろいろな土が混ざるため、「忠類ナウマン象の一部」と厳密には言えず、また、今回発見した化石とは異なり地層中のどの位置に埋まっていたかも不明です。ただし、12万年前の時点で分散していた頭骨の一部を重機やスコップでさらに細かく砕いたものである可能性も残されています。部位が鑑定できれば研究が進むかもしれませんので、現在はこれらの分析も進めています。

 また、1969年の道路工事で設置された止水壁やコンクリート側溝、1970年の発掘で使用された板材も確認できたことから、過去の発掘エリアと今回発見した化石との位置関係をほぼ正確に把握した結果、未発掘エリアの中で忠類ナウマン象の化石がまだ埋まっている可能性がある位置を絞り込むことができました。今回発見した化石は7㎝程度の小さなものですが、今後の発掘や新たな化石発見に向けて大きな一歩となりました。

 そして、今年はナウマンゾウ命名100年の年にあたります(1924年に京都帝国大学の槇山次郎教授が静岡県産の化石をナウマンゾウと命名)。忠類ナウマン象はこれまで23体も復元骨格が作製され全国各地の博物館のほか海外(クウェート)でも展示されるなど、日本で発見されているナウマンゾウ化石の中で重要な標本の一つとして位置付けられています。命名100年にあたる年に忠類ナウマン象の化石が再発見されたことは、ナウマンゾウの研究史的にも意義があることとなりました。

地域的、生涯学習的意義

 1969〜1970年に発見された忠類ナウマン象化石は、小さな骨片以外は全て、札幌にある北海道博物館が収蔵しています。そのため忠類ナウマン象記念館では、実物から型を取ったレプリカのみを展示していました。今回の発見は、初めて忠類ナウマン象化石の実物を地元で収蔵することになります。また、今年は忠類ナウマン象記念館が開館以来、初めてリニューアルした年であり、忠類ナウマン象を核とした様々な地域づくり(生涯学習事業)の展開を加速しはじめたところでした。その点でも、新発見の化石は今後の重要な要素となりました。

 そして、今回発見した化石の鑑定では、おびひろ動物園にいたアジアゾウ「ナナ」の頭骨が決め手となりました。ナナは令和2(2020)年に亡くなった後、分析や骨格標本作製のため帯広畜産大学に運ばれ、その時の作業で、頭骨の内部が観察できる状態になっていたのです(別紙1)。実は、ナナはまだ仔象であった1970年に、「ナウマンゾウの墓参り」のため、忠類(当時は忠類村)を訪れています。このように忠類に縁のあるナナ(の頭骨)が化石鑑定の決め手となったことはとても感慨深いことであり、忠類の地域史を語る上でナナは昔と今を繋ぐ特別な存在となりました。

参考:ナナが忠類村を訪れた時の記事(十勝毎日新聞社HP)※頁の後半に掲載

https://kachimai.jp/feature/arumachi-project/proj/sp_200305.php

今後の予定

緊急報告会

日時等:12月22日(日)午後1時半から2時半、忠類ナウマン象記念館、入場無料

内 容:報告1「発見に至るまでの経緯と発見の意義(仮称)」幕別町教育委員会 添田雄二

    報告2「化石の鑑定について(仮称)」足寄動物化石博物館 澤村 寛氏

定 員:40名。電話で事前申込必要(忠類ナウマン象記念館:01558-8-2826 ※火曜定休)

発見した化石の展示

12月22日(日)から冬休み終了までを予定(その後は研究、保存のため収蔵庫で管理)。

※部位鑑定の決め手となったアジアゾウ「ナナ」の頭骨も展示予定

レプリカの作製

年度末の完成を目処に化石のレプリカを作製し、以後はそれを常設展示する予定。

参考文献

里口保文(2010年)「忠類ナウマンゾウ発掘地点の堆積環境とその変化」、化石研究会誌特別号第4号、46-49.
添田雄二(2010年)「北海道忠類晩成のナウマンゾウ化石産地から産出した珪藻化石分析」、化石研究会誌特別号第4号、50-52.
高橋啓一(2010年)「ナウマンゾウ産状の再検討」、化石研究会誌特別号第4号、66-70.
岡村喜明(2010年)「ナウマンゾウ化石産地から産出した足跡化石」、化石研究会誌特別号第4号、71-74.

本件についての問い合わせ先

幕別町教育委員会 学芸員 添田雄二
① 幕別町役場 忠類総合支所 電話:01558-8-2201
② 忠類ナウマン象記念館   電話:01558-8-2826
 

別紙1

このページの担当は

教育委員会 生涯学習課 生涯学習係
〒089-1707 北海道中川郡幕別町忠類錦町439番地1
電話 01558-8-2201 (土日・祝日を除く平日の午前8時45分から午後5時30分まで〔12月29日から1月3日までを除く〕)

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